建物をつくる前に、目黒区の未来を描く――区民センター再整備に必要な視点
- オフィス はま よう子
- 7月17日
- 読了時間: 5分

公明党目黒区議団は、立憲民主党の目黒区議の皆さまと共に、公共施設マネジメントを専門とする東洋大学PPP研究センター客員研究員の南学先生を講師にお迎えし、勉強会を開催しました。
人口減少や少子高齢化が進み、建設資材や人件費も高騰する中、これからの公共施設をどのように整備し、維持していくのか。
目黒区にとっても、避けて通ることのできない重要な課題です。
人口減少時代に求められる公共施設の「縮充」
今回の勉強会で大きなテーマとなったのが、南先生が生み出された「縮充」という考え方です。
「縮充」とは、公共施設の規模や総量を単純に縮小するという意味ではありません。
人口や財政の状況に合わせて施設全体を適正化しながら、区民に本当に必要な機能やサービスについては、これまで以上に充実させていくという考え方です。
これからの時代、従来と同じ規模、同じ使い方の公共施設を、そのまま維持し続けることは難しくなります。
一方で、施設を減らすことだけを目的にすれば、区民サービスの低下や地域コミュニティーの衰退につながりかねません。
だからこそ、施設の床面積や建物の数だけで判断するのではなく、
「区民にとって本当に必要な機能は何か」
「一つの施設で、どのような価値を生み出せるか」
「地域の交流や活動を、どのように支えるか」
という視点が必要です。
多機能・複合化に潜む「縦割りの罠」
行政が公共施設の整備を進める際、多機能化や複合化という言葉がよく使われます。
しかし、図書館、スポーツ施設、高齢者施設、子育て支援施設などを一つの建物に入れただけでは、本当の意味での複合化とは言えません。
それぞれの部局が従来通り自分たちの場所を管理し、利用方法や受付、予算、責任の所在も別々のままであれば、単なる「部局の寄せ集め」になってしまいます。
さらに、施設の用途や機能を見直そうとすると、「どちらの部局が責任を持つのか」「予算をどこが負担するのか」といった対立が生じ、議論が前に進まなくなることもあります。
これが、行政が陥りやすい「縦割りの罠」です。
本当に区民にとって使いやすい施設をつくるためには、行政内部の都合や組織の境界を超え、区民目線で施設全体を設計する必要があります。
設計すべきは、建物ではなく「機能」
今回、特に心に残ったのは、
「行政が最初に行うべきなのは、建物の設計ではなく、その施設が果たす機能の設計である」
というお話です。
公共施設の整備というと、建物の大きさ、部屋の数、設備、内装などの議論から始まりがちです。
しかし、本来はその前に、
「この施設は誰のためのものなのか」
「どのような人に利用してもらいたいのか」
「そこで、どのような活動や交流を生み出したいのか」
「10年後、20年後の目黒区に、どのような役割を果たすのか」
という目的を明確にしなければなりません。
子どもや若者が安心して過ごせる場所なのか。
子育て世代が相談や交流のできる場所なのか。
高齢者や障がいのある方を含め、誰もが利用しやすい場所なのか。
文化、スポーツ、学び、地域活動が交わり、新しいつながりが生まれる場所なのか。
こうした「機能」を明確にして初めて、必要な建物の形や規模が見えてきます。
目黒区民センター再整備に必要な明確な未来像
目黒区民センターの再整備については、一旦計画が凍結され、令和7年度・8年度の2年間をかけて、今後の方向性が検討されています。
現在、資材費や人件費の高騰は、公共施設整備に大きな影響を与えています。
建設費が当初の想定を大きく上回る中、すべての要望を盛り込み、従来と同じ発想で施設を整備することは現実的ではありません。
だからこそ、単に規模を小さくする、設備を減らすという発想ではなく、財源に見合った施設としながら、目黒区民に必要な機能をしっかりと確保することが重要です。
そのためには、目黒区が明確なターゲットとコンセプトを示さなければなりません。
「どのような人に、どのように利用してもらうのか」
「この施設によって、目黒区の暮らしや地域がどう変わるのか」
「区民が、どのような未来に希望を持てるのか」
こうした未来像を、行政だけで決めるのではなく、区民の皆さまと共に描いていく必要があります。
民間の知恵を生かすための「任せる勇気」
公共施設を整備する際、行政は細かな仕様書を作成し、設備や材料、部屋の配置、運営方法まで詳しく定めることがあります。
しかし、あまりに細かく条件を決め過ぎれば、民間事業者が持つ専門性や創意工夫を生かすことができません。
区が示すべきなのは、細かな方法ではなく、
「どのような課題を解決したいのか」
「どのような価値を区民に届けたいのか」
「どのような未来を実現したいのか」
という目的です。
その目的や守るべき条件を明確にした上で、具体的な整備方法や運営の工夫については、民間の知識や経験を最大限に生かす。
行政には、適切な管理と検証を行いながら、民間に任せる勇気も求められています。
これは、行政が責任を放棄するということではありません。
むしろ、区が未来像や成果に責任を持ち、民間には最も効果的な実現方法を提案してもらうという、新しい役割分担です。
「この施設があって良かった」と思える場所へ
目黒区民センターの再整備は、単なる建物の建て替えではありません。
目黒区がこれから、どのような地域を目指していくのか。
区民同士がどのようにつながり、学び、文化やスポーツを楽しみ、安心して暮らしていくのか。
その未来を形にする大切な事業です。
豪華な建物をつくることが目的ではありません。
子どもたち、若者、子育て世代、高齢者、障がいのある方、文化やスポーツに関わる方々など、多様な区民が自然に集まり、交流し、新しい活動が生まれる。
そして、多くの区民の皆さまから、
「この施設があって良かった」
「ここに来ると誰かとつながれる」
「目黒区の未来が楽しみだ」
と思っていただける。
そのような施設を目指すことが大切です。
限られた財源を大切に使いながら、目先のことだけではなく、10年後、20年後、さらにその先の目黒区を見据える。
明るい未来像を描き、目黒区民にとって本当に一番良い施設をつくる。
今回学んだ視点を、今後の目黒区民センター再整備の議論にしっかりと生かしてまいります。



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